道路や橋など、生活に欠かせないインフラを身近なものに感じてもらおうと、土木学会が「ドボ博」というウェブサイトを公開しています。これまでにも東京のインフラを紹介していましたが、この度、四国バージョンとして「四国インフラ解剖 恋する大地へ」が登場しました。
道路や橋、川などの土木構造物をそれぞれ、
骨格系:生体の基本的支柱をなす器官 (都市の骨格をなす、川、濠、崖などの地形・水系)
神経系:生体の運動・知覚をつかさどり、刺激を伝達する器官 (都市の情報処理・伝達を担う、通信塔、官庁街、広場など)
消化器系:食物の消化・吸収をつかさどり、口から肛門までを結ぶ器官 (物資を搬入する港や空港、その分配拠点である市場など)
循環器系:栄養物や酸素などを体内の各部分に運ぶ器官 (人やモノが運ばれる、鉄道、道路、橋、トンネルなど)
呼吸器系:酸素と二酸化炭素の出し入れを基本とする外呼吸を営む器官 (酸素を供給する公園や緑地)
免疫系:体内に入ってきた異物を排除するための器官 (都市に侵入する外敵を駆逐する防衛施設や防災施設)
細胞の代謝機能:細胞の新陳代謝を促すしくみ (都市の「細胞」である人の成長を支える学校、住宅地、運動施設、棚田など)
皮下組織:皮下の脂肪組織・血管などからなる部分 (港町の「皮」をなす海岸線の内側に広がる埋立地や人工的につくられた地盤)
と分類し、戦時の遺構や防災施設なども掲載されています。選定した基準は
四国インフラ物件の選定にあたり重視した観点
1. 人体組織と関連付けて説明することのできる、四国の主要インフラ又は地形であること。
2. 土木学会の賞を受賞していること。
3. 土木学会附属土木図書館デジタルアーカーブに画像資料があること。
とありますが、受賞作品ということもあって掲載されている写真も奇麗。成り立ち、歴史も分かってなかなか興味深いものになっています。四国を旅する人のガイドブックにもなりそうです。
瀬戸大橋など大規模な土木構造物から、松山・花園町の整備など最新の事例、日土小学校など建築物の紹介もあって幅広い掲載内容で、地元の人にとっても新しい発見があるかも。
個人的にも地元のこんな解説に、なるほど、と思ってしまいました。新居浜市を住友の企業城下町とした上で、最後のまとめは
このように新居浜市の歴史を鑑みると、歓楽街をはじめとした都市の感性的な情報処理を担う<右脳>や<左脳>の位置はむしろ定まらず、その時々によって位置をかえている。むしろ、<脳幹>としての住友が必要に応じて、様々な施設をお金と人を導入して建設し、自然発生的に都市を作り出したように見えてくる。日本の各地には見られない非常にユニークな都市形成である。だが現代では、都市形成における脳幹の機能が当時よりも薄まりつつある。このユニークさを、どう引き継ぎ今後の都市像を描いて行くか、今まさに岐路に立たされているのではないだろうか。(山田)
このドボ博と似たようなものとしては、以前、日本建築家協会四国支部が四国の建築物をお遍路の88か所にかけて紹介した「建築巡礼88」というものもありましたね。