エリアリノベーション 変化の構造とローカライズ

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エリアリノベーション 馬場正尊+OpenA

エリアリノベーション

「まちづくり」と聞いたときに、どんな活動をイメージするでしょうか。NPOや市民団体が自発的に活動し、地域を盛り上げていく手法が今は一般的かもしれません。行政が主体となり、トップダウン的に何か仕掛けることは少なくなった気がします。

この「エリアリノベーション」も、広義では「まちづくり」のひとつの手法かもしれません。しかし、この本ではこれまでのそうした「まちづくり」とは違う仕組みで、まちが変化していった状況を分析しています。

第1章で述べられていますが、本書では「計画する人」→「つくる人」→「使う人」というこれまでの街や空間ができるプロセスとは全く逆で、ある「使う人(達)」が主体的に動き、特定の建築(空間)を再生する―それが「まち」(エリア)に波及している活動に注目しています。

住宅や建築で「リノベーション」という言葉が一般的になりましたが、建物のリノベーションがあるエリアでネットワーク化し、地域を変えていく手法を「エリアリノベーション」とし、6つの事例を紹介しています。

ちなみに、この著者の馬場正尊さんは建築家で「東京R不動産」のディレクターでもあります。その東京R不動産も本書の事例「東京神田・日本橋」の活動の中で生まれたものでした。ですので、東京R不動産をご覧いただくと馬場さんの活動の一端が見えてきます(東京R不動産とは)。

一昔前、賃貸や中古住宅の売買は「家賃」や「最寄りの駅からの距離」、「利便性」こそが物件選択の絶対的な基準でした。今でこそ、それらで測れない物件の価値・魅力にスポットを当て、不動産を紹介する媒体が増えましたが、東京R不動産はその先駆けでした。建築(空間)が変わると街も変わる。そうした実践をしてきた馬場さんは、西条糸プロジェクトの住宅コンペで審査委員も務めています。

糸プロジェクトも、活力のあるエリアを生み出すという点では「エリアリノベーション」になるでしょう。この本で紹介している事例とは異なり、既存の街を再生すというよりはまったく新しい街を生み出すという点ではこれまでと違って新しい試みですが。いずれにしても、建築やまちづくりの専門家でなくとも読みやすい本ですので、愛媛の方、地方でまちづくりをしている(しようとしている)人にもおすすめしたい一冊です。

〈目次〉
この本の目的と使い方

第1部 エリアリノベーションとは

1章 エリアリノベーションの背景
──「まちづくり」という言葉からの脱却
──郊外化のメカニズム
──資本の流れと風景の関係
──マスタープラン型から、ネットワーク型へ

2章 基本構造:3つのポイント
──空間ができるプロセスの逆転
──職能を横断するプレイヤーの登場
──街を変える4つのキャラクター
──1) 不動産キャラ、2) 建築キャラ、3) グラフィックキャラ、4) メディアキャラ

3章 ローカライズ:9つのポイント
──変化の兆し/サイン
──きっかけの場所/スペース
──事業とお金の流れ/マネタイズ
──運営組織の形/オペレーション
──地域との関係/コンセンサス
──行政との関係/パートナーシップ
──プロモーションの手法/プロモーション
──エリアへの波及/インパクト
──継続のポイント/マネジメント

4章 計画的都市から、工作的都市へ
──産業構造の風景化
──工作的都市の出現

第2部 エリアリノベーションの実践

01 東京都神田・日本橋—-馬場正尊
02 岡山市問屋町—-明石卓巳
03 大阪市阿倍野・昭和町—-小山隆輝・加藤寛之
04 尾道市旧市街地—-豊田雅子
05 長野市善光寺門前—-倉石智典
06 北九州市小倉・魚町—-嶋田洋平

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