「家を建てよう!」と思ったときに、まず考えるのが土地のこと。理想の我が家のデザインのことは当然気になるポイントですが、「どこに建てるのか?」ということはそれ以上に重要です。一般的にはそこに何十年も暮らすわけですから、慎重に選びたいですね。
今、そして将来の生活を思い描きながら考える土地探し。人それぞれ、様々な優先順位があると思いますが、今回は建築士の自邸建築体験談として、土地探しのポイントを振り返りたいと思います。
優先順位は仕事?子育て?それとも遊ぶこと??
さっそくですが、今回は少しレアケースなんです。実は、自邸建築は独身時代!仕事柄ですかね。家賃がもったいなくて「どうせ家賃を払うなら…」という安易な考えから、家を建てたくなったんです。。
大学時代から、いろんな賃貸住宅で一人暮らしをしてきました。鉄骨、木造、コンクリート打ちっ放し。いわゆるデザイナーズ賃貸にも住んでみました。でも、どれもイマイチ。間取りの問題、音(プライバシーの問題)などなど、賃貸暮らしが物足りなくなってきたころでもありました。
というのも、やっぱり賃貸住宅は賃貸住宅。安く建てて、建設費を回収するために建てられているので、住み心地なんて二の次っていう感じなんですね。もちろん、入居者の心をつかもうと工夫はしているのですが、利回りという収益の壁は大きいんです。
賃貸、身軽なところはいいんですけどね。と、話がいきなりそれてしまいましたが、今回の場合「理想の家族のマイホーム」というところからはスタートしていないのですが、いずれは結婚をして家庭を築く…ということは頭に入れていた(つもり)。なので、そこは皆さんの参考になればと思って続けます。
さっそく、結婚して子育て―という点についてですが「学校」は重要なポイントにしていました。仕事柄、いろんな方の家づくりにも関わっているのですが、大人はどうしても仕事の通勤を優先しがちなようです。意外と子どもの学校が遠かった…なんて後悔している方もいらっしゃいます。
子どもが巻き込まれるニュースが話題になることが多い昨今。通学路も含めて、考えておきたいですね。教育熱心な方なら、学区も気になりますよね。ということで、学校を基準にエリアを絞り込む方は多いのではないでしょうか。
そして、学校と並行して考えたのが通勤。通勤には時間をかけたくありませんでした。都市部の電車通勤なら、スキマ時間を使って通勤時間にできることがあるのかもしれませんが、地方の場合は車社会。車の場合はただひたすら運転するだけ。スマホも使えず、ただただ時間を浪費してしまいます。
さらに「学校」「通勤」の2点に加えたのが「街中」からの距離。当時は夜の街にもしばしば出かけていました。タクシー代、代行にかかる費用を考えたら、ここも外せないところ。。3点決まると、物理的にはほぼエリアが絞り込まれます。会社と街中の間にある学区を選ぶよりほかありません。その学区から、理想の場所を探すことにしました。
ちなみに、私の場合は生まれ育った地元ではありませんでしたので、親との近居などを考慮する必要はありませんでした。
土地の予算は?更地?分譲地?どちらがお得??
学区とエリアを絞り込んだら、次は予算とにらめっこ。自邸の新築にかけられる予算から、土地に使える割合を考えれば、またまた場所は絞り込まれてきます。建物と土地の費用の割り振りは、人それぞれあると思います。
極端に言えば「建物は最小限で、ライフスタイルに合わせて増築する」なんて場合は、土地にお金をかけることになりますが、私の場合は総額と建物の予算のイメージがある程度決まっていたので、土地にかけられる費用は安いに越したことはない、といった状況でした。
安い土地を探すとなると、必然的に分譲地は外れます。建築条件付き(建築会社が決まっている)で安い坪単価の土地はありますが、私の場合は建築会社が決まっていますから、建築条件付きの土地は外れます。一般的に土地の価格は、
分譲地>更地
となっています。分譲地はきれいに整形して、相場を見て分譲価格を決めますからね。建物でいう新築と中古ほど差はありませんが、「新しい土地」というイメージで売るためにどうしても周辺相場より安くはならないんです。
こうなると、さらに土地は絞られますし、残った土地はまさに玉石混交。ちょっと技術的な問題も検討しないといけなくなります。
本当に、掘り出し物?更地の環境をチェック
ここからが建築士の腕の見せ所でしょうか。敷地の環境を読み解く必要が出てきます。パッと見た坪単価が安くても、境界工事や外構工事、上水道の工事などが必要になって結局高くついた、ということが無きにしも非ずです。そこで土地の価格に影響される要素ですが、
・地型(じがた)
・接道状況
・インフラ(上下水道)
の状態によって、更地は分譲地との価格差が出てきます。分譲地は上記の項目がすべていい状態でそろっていますからね。更地の場合、そうはいかない場合もあるのですが、建物の計画で乗り越えられるものと乗り越えられないものがあるので注意が必要です。
・地型について
一般的には長方形や正方形の土地なら住宅のプランが設計しやすいのですが、三角形やL字型、旗竿状(入口が狭い)の土地など形がいびつなものは、建物の配置が限定されてしまうので土地の価格が下がります。
また、境界がはっきりしているか、あるいは境界の基礎がしっかりしているかも重要なポイント。土地の形はプランでカバーできますが、境界の状態が悪いと外構工事でコストアップにつながってしまいます。道路から高低差のある土地なども同様の理由で、土地の価格が下がっていたりします。
・接道状況について
敷地前面の道路については原則、建物が建てられるのが4m以上幅員のある道路に2m以上接していること。建築基準法で決められていることです。ただ、更地の場合は前面道路が4m未満の場合があります。その場合はセットバック(道路後退)をして4m確保する必要があります。前面道路が4m未満の場合は、セットバック前か後か、売り出されている実質の敷地面積をチェックする必要がありますね。
また、国道や県道、市道といった公の道路ではなく「私道」の場合は舗装の状態が悪い、あるいは舗装されていない場合もあって、それが地価にはマイナスポイントになります。権利関係がややこしい場合もマイナスですね。
一方で、国道や県道など大きな道に接している場合は商業施設が建てられるために地価が上がりがちですが、土地の面積が小さい場合は逆に周囲より価格が下がっている場合があります。その場合は、車の騒音対策などが必要になるので注意したいところです。
・インフラについて
こちらはよほど郊外に行かない限り、それほど難しい問題ではありませんが、上水道は敷地に引き込まれていても口径(管のサイズ)が小さかったり古かったり、新規に建物を建てる際にはやり替える必要がある場合があります。その負担が土地の売主か買主か、というところは要チェックですね。
排水に関しては、下水か浄化槽かといったところでしょうか。下水の計画がない場所は自治体で浄化槽設置の補助がでることもあり、維持管理費を含めて費用はさほど有利不利はないように思います。ただ、近々下水が開通するエリアは、浄化槽から下水への切り替え時期を確認したいですね。
これからの土地探しは、ハザードマップを必ずチェック!
ということで、周辺と比較して坪単価が安い土地は、ほぼ上記のマイナスポイントのいずれかが含まれます。私が選んだのは30坪を切る不整形な土地。極端にいびつなわけではありませんでしたが30坪を切るとプランが限られることもあり、土地の価格が下がる要因になります。
さらに、県道沿いの小さな土地。車の通行量が多い割には敷地が小さいので車社会の地方では店舗にも不向き。目の前にはごみ置き場もあって、住宅としても敬遠されていたことから周辺相場からはかなり地価が下がった状態でした。
それに加えて、かなり昔に造成された分譲地でしたが、境界もあいまいな部分がありました。が、私の場合は角地だったので隣との問題だけクリアすれば何とかなる状態でした。
マイナス面が多く相場よりかなり安価な土地でしたが、なにより、学校やスーパー、病院などがそろった文教地区。街と仕事場の中間地点にあったこともあり、即決。土地が極端に安いことで建物に費用を割り振ることができたので、鉄骨造の3階建をチョイスしました。本当はRC造がよかったのですが…そこまでは叶いませんでした。。どこか、妥協は必要ですよね。
というわけで、不利な状況もうまく乗り越える策を考えつつ、土地が決めることができたのでした。
ただ、ここまでは2006年ごろの選択。今から土地の購入をお考えの方は、ぜひハザードマップを一番にチェックしてください。土砂災害や洪水に対処する建物を計画すれば、それもアリかもしれませんが。。
これまでにチェックしたポイントのほかにも、確認したい項目はたくさんあります。後々、チェックリストにもしたいですね。
あと、安い土地を検索する場合は、「土地」で絞り込むだけでなく「建物」で中古住宅も探してみてください。ほぼ土地値の中古住宅があったり、解体費プラスアルファの値引きを引き出せることもありますからね。
建築士:みやもとりゅうぞう
ハウスメーカー勤務を経て、地域の工務店で住宅や店舗など様々な建築の設計や現場を担当しています。一級建築士。こちらのブログは会社とは別に、あくまでも個人的な見解によるものです。